旅へ出かけるなら、その土地の知識を頭に入れておきたいところ。とりわけ生態系についての理解を深めておくことは、大自然の中を散策する際にもきっと役立ちます。今回は沖縄本島北部・やんばるの森に住む、さまざまな動物達をご紹介します。
2021年7月、「奄美大島、徳之島、沖縄本島北部および西表島」が世界自然遺産として登録されました。とりわけ、緑豊かな亜熱帯のジャングルで、独自の生態系をつくりあげてきた沖縄本島北部の「やんばるの森」は、このエリア固有のさまざまな動植物の宝庫でもあります。
希少な生態系はとてもデリケート。知らず知らずのうちに外来種の種などが持ち込まれてしまうと、本来そこにあるべき姿を大きく変えてしまうことがあります。今、私達旅行者に求められているのはレスポンシブル・ツーリズム(責任ある観光)。旅へ出かける際は、その地域の風土や文化を理解し、自身の行動に責任を持つことで、環境への負荷をやわらげることにもつながります。
そこで、やんばるに生息するいきもの達をクイズ形式でご紹介!
ぜひ、お子様とご一緒にクイズを解いて、沖縄の動物達についての知識を深めてみませんか?
第1問 日本で唯一の「飛べない鳥」ってなに?
ペンギンやダチョウのように、世界には「飛べない鳥」が数多くいますが、日本にも飛べない鳥が暮らしています。
それは、やんばるの森だけに生息する、ご存じ「あの鳥」。
地元の人々には「ヤマドゥ(山の鳥)」などと呼ばれ、古くから慣れ親しまれてきたのですが、正式に新種として発見が発表されたのは、わずか40年ほど前。
1982年には国の天然記念物に指定されました。
正解は・・・
「ヤンバルクイナ」です!
この鳥が飛べなくなったのは、およそ100万年にユーラシア大陸から切り離された沖縄諸島の風土と関係しています。隔離された島の中では、外敵となる生物がほとんどいなかったため、長い歳月を経て、ヤンバルクイナは飛翔能力を失ってしまいます。しかし、ハブ退治やネズミ駆除のために導入されたマングースや野良猫に捕食されて激減し、残念ながら2006年には絶滅危惧種に。現在は地域の人々の努力によって回復の兆しが見えてきましたが、まだまだ絶滅が心配される鳥類として保護活動が続けられています。
山道を車で走っていると、運がよければ目にすることも!
実は交通事故も個体数減少の大きな要因の1つになっているんです。そのかわいらしい姿を見かけたら、スピードを落とし、道を譲ってあげてくださいね。
第2問 平和な森に住む「日本最大の甲虫」とは?
かつて大陸から切り離され、独自の進化を辿ってきたやんばるの動物達。
イタジイ(常緑の広葉樹で、スダジイの沖縄名)が茂り、近くに川が流れているような湿潤な森の中には、東南アジアの熱帯昆虫から派生し、進化を遂げたとされる遺存種が生息していますが、体長50〜60mmにおよぶ大きな甲虫(カブトムシやクワガタの仲間)もその1つ。
人里離れた森の奥で、ひっそりと生息しています。
答えは・・・
「ヤンバルテナガコガネ」です。
実はこの生き物も、ヤンバルクイナ同様、国指定の天然記念物。林道開発による森林の伐採や、昨今の急激な気候変動による乾燥化などが影響して、その存続が脅かされています。また、このコガネムシは、一度に産卵するタマゴの数が10個程度と、極めて低い繁殖率が特徴。山深い森林の内に生息しているため、めったに人の前に現われることはありませんが、もしリバートレッキングなどの際に見つけたら、絶対に捕獲したりしないでください。
第3問 アタマが赤くて「キョキョキョ」と鳴くのはなんて鳥?
写真は、親鳥の帰りを待つヒナ。
主にオスがイタジイやタブノキといった樹木の枯れ木に巣穴をあけ、メスと共に営巣。一度つがいになるとパートナーが死ぬまで連れ添い、毎年1回、仲睦まじく子育てを行ないます。
さらに、巣立ちのあとも1ヵ月程度は親子で連れ立って行動するという仲の良さ。家族の絆を大切にする鳥なんですね。
ヒントは、「キョキョキョ」と聞こえる甲高い鳴き声。そして、1972年に沖縄県の「県鳥」に選定されたことです。
正解は・・・
「ノグチゲラ」です。
ゲラとはキツツキのこと。立派なくちばしを器用に使って古木に巣穴を開けたり、縄張りを主張したりするためにドラミング(木をリズミカルにつつく音)を奏でます。早朝に林道をお散歩していると、ごくまれにその個性的な鳴き声やドラミングの音を聞けるかもしれません。
デイゴの花の蜜を好む習性があり、その開花時期である3月から5月頃がもっとも観察しやすい季節なのだとか。この鳥もマングースに捕食されたり、近年沖縄に増加しているカラスに襲われたりしたことで個体数を減らしていますので、積極的な保護活動が進められています。
第4問 姿はまるでゴジラ!「生きた化石」といわれる両生類は?
九州南方から台湾にかけて続く南西諸島。特に沖縄北部でもっともよく見られるのが、この両性類です。
両生類と聞くと、例えばカエルのように滑らかな肌の個体種をイメージしますが、こちらの動物は、見た目がずんぐりとしてデコボコと粟立った肌が特徴的。また、背中から尾にかけて突出した肋骨が浮き出るように皮膚を押し上げている7〜9対のイボが、ゴツゴツした印象を与えます。
この隆々としたいかつい姿かたちから付いたあだ名はゴジラ。
原始的なシルエットだからでしょうか。俗に「生きた化石」とも呼ばれています。
この両生類の名は・・・
「イボイモリ」でした!
怪獣のようなちょっと恐ろしげな佇まいとは違って、ゆっくりとした動作で、性格はかなりおとなしめ。林道の傍らや農地などをノシノシと歩いていることが多く、その緩慢な動きからマングースなどの天敵に捕食されてしまうことがあるのだそうです。
このイボイモリも希少性が高く、県の天然記念物に指定されています。
他にもいます! やんばるの森の希少生物
やんばるの森は、珍しい生き物が暮らす、いわばロストワールド。特にレッドリスト(絶滅が危ぶまれている野生生物種)に加えられている動物達を集めてみました。
そもそも、やんばるの森を擁する沖縄本島北部が世界自然遺産の候補地に選ばれたのは、類いまれな生態系と生物の多様性が残されているから。独自の進化を遂げた希少生物の生息域として、その価値が見直され、未来にわたって守られていくことが重要視されています。
そんな沖縄の美しい自然を存続させるために、私達にもできることがきっとあるはず。この貴重な動物達と、それを育んできたやんばるの森をこれからも大切に見守っていきませんか。
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