開業以来、活気あふれるワイキキ観光の拠点として親しまれてきたホクラニワイキキ・ヒルトングランドバケーションズクラブ。今年4月、その人気リゾートの新ゼネラルマネージャーにミッチ・ヨコヤマ氏が就任しました。
ワイキキ・ビーチ・ウォークの最北端に位置し、同じオアフ島にありながら、ヒルトン・ハワイアン・ビレッジ内のクラブリゾートとは趣を違えた、都会型リゾートの醍醐味を提供しているホクラニワイキキ。現在、その運営を指揮しているのが、日本人のご両親を持ち、東京で生まれたミッチ・ヨコヤマ氏です。
ご家族と共に5歳で渡米した氏は、カリフォルニア州マンハッタンビーチで育ち、大学卒業後はロサンゼルス国際空港の日本航空・旅客サービス部門に勤務。やがて単身ホノルルに生活拠点を移し、2001年からヒルトン・ハワイアン・ビレッジでホテルマンとしてのキャリアをスタートさせました。
「当初は、ラグーンタワー・ヒルトングランドバケーションズクラブのゲストサービスを皮切りに、さまざまな仕事に携わってきました。例えば、カリアスイーツ、グランドワイキキアン、ザ・グランドアイランダー、ホクラニワイキキ で、施設のセットアップとサポート、新しい従業員のトレーニングなどを担当し、ラスベガスのエララ・ヒルトングランドバケーションズクラブではオープニング準備に携わりました」
およそ1200室もの部屋を有するエララでは、ハウスキーピングスタッフの人数も規格外です。ミッチさんが現場で接したチームは、普段見慣れているリゾートの3倍の規模。スタッフを相手に、おもてなしの精神を再教育することにもやりがいを感じていたと語ります。
「ハワイにはアロハスピリットがありますよね。その中には“マラマ”があり、“相手を思いやり、お世話をする”といった意味の言葉。日本の“おもてなし”とよく似ています。見返りを期待せず、お客様のために奉仕するホスピタリティの文化は、アメリカ本土ではあまり浸透していません。しかし彼らは素晴らしいチームでした。私が示す言葉に素直に耳を傾け、積極的に吸収し、新たに携えておくべき心構えを歓迎してくれました」
もちろん、ご自身もスタッフ達との協働を通して、刺激を受けたことも多かったようです。そこで培われた経験が、のちのハウスキーピング部門のマネージャー職でいかんなく発揮されたことはいうまでもありません。日本のクラブメンバー様から「オアフ島のクラブリゾートでもっとも日本的なおもてなしの心が実践されている」と評判のホクラニワイキキに、そのDNAは確実に継承されています。
パンデミックを乗り越え、さらに進化したホスピタリティ
多様な領域のマネージメントを経てゼネラルマネージャーとなった氏が、コロナ禍以前と比較して、ゲストの層とサービスの質が変化しつつあることを分析してくれました。
「私は2016年に、当リゾートのアシスタント・ゼネラルマネージャーに就きましたが、パンデミック以前は約70%が日本人メンバー様でした。それが現在に至って、ほぼ逆転しています。調べてみたところ、約7割近くがアメリカ本土からのゲストに置き換わり、残りの約3〜4割が日本人と韓国人のゲストです」
アメリカのメンバー様はレンタカーの利用が多く、かつてないほど駐車場の利用が増加したといいます。その数、実に2倍以上! そこで全てのゲストにご満足いただくため、駐車場の管理と調整作業には多大な労力が費やされました。
「また、アメリカ人の皆様は日本人の皆様に比べて、バーを楽しみたいというニーズがあるようです。つまりはお酒を豊富に用意しておかなければならないということですね。これに限らず、当リゾートにご滞在されるゲストの動態変化に応じて、需要と供給のバランスを常に確認する必要が生まれてきました」
しかし、リゾートを訪れる皆様の顔ぶれがどんなに変わっても、安全対策にはことさらに注意を払っていると続けます。
「ハワイは、他のアメリカのどの州よりもコロナ禍での安全対策を意識していますが、それでも屋外でのマスク着用義務が解除されたり、いくつかの防疫プロトコルが緩められたりしています。しかし、私達は日本のメンバー様がとても敏感に感じられていることを理解しています。あくまでもゲストのマスク着用は任意ですが、スタッフはT.P.Oに応じてメンバー様の不安を払拭するためにマスクを着用しています」
一部のアメリカ人ゲストからは「なぜ、まだマスクをしているの?」と声をかけられることがあるようですが、氏は「皆様を守りたいからです」とお答えしているとのこと。そして、スタッフの意識を高めることは、彼らの仕事を守ることにもつながります。
「私達チームは決して大きくないため、一人の欠員が業務に悪影響をもたらします。ソーシャルディスタンスの徹底や、換気装置のない密閉空間には努めて行かないことなど、毎週ニュースレターを通じて対策を共有し、日々のブリーフィングで繰り返し注意を促します。それは職場だけでなく、プライベートの場面にもおよびます。ちょっとした気の緩みによって家族を危険にさらし、自分自身や仲間の健康を損なってしまうことがあるかもしれません」
何より心を痛めるのは、リゾートにお越しになられたメンバー様が滞在中に感染してしまった場合。とりわけ日本人メンバー様がバケーションのさなかに陽性判定を受けてしまうと、帰国の予定日を超えて立ち往生することになり、リゾートの空室状況によっては滞在場所の確保にも困ってしまうことになります。
「そういった緊急の場面では、特に言葉の壁を心配される日本人メンバー様も多いことでしょう。でもご安心を。私達が皆様を全力でサポートします! 心配事があれば、いつでも気軽にコミュニケーションを取ってください。当リゾートは日本語の話せるスタッフが比較的多いです」
AAA(アメリカ自動車協会)が毎年、優れたホテル施設を表彰する「4ダイヤモンド」を受賞しているホクラニワイキキ。そのホスピタリティは、さらに進化を続けています。近年、感染対策に対する検査項目が追加されましたが、それも全てクリアした上での受賞となりました。
再開されたさまざまなアクティビティ
コロナ禍に見舞われる以前、オアフ島には娯楽とにぎわいがあふれていました。一年中ショッピングや食事が楽しめるワイキキ界隈の喧騒は消え失せ、観光客の姿や往来する車も数えるほど。街はまるでゴーストタウンになったかのように沈黙し、憂鬱な気持ちにさせられたと、氏は当時を振り返ります。
「でも、これまでは控えていたリゾート内でのアクティビティも徐々に再開し始めています。内容はさまざまですが、定期的に行なうものだと、週に2回、屋上デッキのナ・ラニ・スカイラウンジで開催するムービーナイトや、早朝からオアフ島の山々の雄大な景色を眺めながら行なうヨガ、毎週恒例のレイメイキング教室などがそれにあたります」
一方、季節限定で不定期に行なうものとしては、毎週1回マイタイと題してフリードリンクを振る舞うイベントが催されているのだとか。また、無料でアイスクリームをお配りすることもあり、いずれも夏ならではのイベントとして人気を集めているようです。
「これらはただ単に飲み物やデザートをご提供して滞在のひとときを楽しんでいただくだけでなく、私やスタッフにとってはゲストの皆様と触れ合う大切な時間なのです。体調におかわりはないか、お部屋では快適に過ごしていただけているかどうか、お手伝いできることはないか。何気ないコミュニケーションを重ねながらニーズをくみ取り、心を開いて会話を楽しむ絶好の機会になっています」
ちなみに、ホクラニワイキキで特筆したいサービスに、お部屋のクローゼットにビーチタオルが用意されていることが挙げられます。タオルは施設内のプールはもとより、リゾートから徒歩圏内にあるワイキキビーチでも使用可。ビーチチェアが必要な時はコンシェルジュに相談すると貸してくれるそうです(有料)。海へお出かけの際は、ぜひ利用してみてください!
快適なリゾートを実現するために
ミッチさんに「リゾート内でメンバー様にオススメしたいお気に入りの場所は?」と尋ねると、「ぜひ屋上デッキのナ・ラニ・スカイラウンジをご紹介してほしい」という答えが返ってきました。
「ラウンジにはバーがあり、素晴らしいカクテルを作るバーテンダーがいるんですよ! ビールはワイキキ・ブリューイング・カンパニーが醸造する地ビールをタップ(樽詰め)でご提供しています」
また、屋上デッキにはカバナ(小さなプライベートスペース)が設けられ、そこにカクテルやビール、テイクアウトしてきたフード類を持ち込んでピクニック気分を味わうこともできます。
近頃、設置されているソファや家具を一新するなど、屋上ラウンジにはリノベーションが施されたとのこと。さらに、2024年に予定されている全室フルリノベーションに向け、その準備も着々と進んでいるようです。
「おそらく、1フロアあたり約3週間の期間をかけ、ほぼ1年にわたって改修プロジェクトを進めていくことになるでしょう。お部屋の全体的なイメージを刷新し、設置している家電や機器をより効率的に使いやすく変更する予定です。これも全てメンバー様やオーナー様から寄せられたリクエストによるもの。私達はゲストからのフィードバックを常にメモしていて、例えばキッチンエリアの改善なども、私自身、楽しみにしているんです」
こうした快適性や利便性を維持していくためには、定期的なリノベーションやメンテナンスが欠かせません。そして、スタッフの密な連携が必須。氏は「この素晴らしいリゾートをかたちづくっているのはチームにある」と語ります。
「フロント、ハウスキーピング、メンテナンスと、あらゆる部門が協力し合いながら高品質なサービスのご提供に努めています。彼らはそれぞれ適切な場所で適切な働きを続け、自ら考えて行動するリーダーシップを備えています。そんな彼らに対して、私はできるだけヒエラルキーを設けず、上司のように振る舞わないようにしています。全ての部門で経験を積んだゼネラルマネージャーは、どちらかというとコンサルタントのような存在かもしれません。各スタッフのよき相談相手となりながら、お互いにどのようなバックグラウンドを持ち、日々何を感じているか、仲間の一員として彼ら同士がコミュニケーションを交わしやすい環境を作るようにしています。チームワークこそが、メンバー様にご満足いただけるリゾートを体現し、成功への重要な要素であると信じています」
スタッフ一人ひとりの能力を高めるにはスキルアップ研修も不可欠。ホクラニワイキキでは「Yokosoカルチャートレーニング」というプログラムで、日本人メンバー様に対する理解を深めています。
「日本の文化を知る機会になるのはもちろん、日本から訪れるゲストが何を求め、期待しているかを理解することが大切です。スタッフの誰もが、リゾートの代表としてゲストの声に耳を傾け、同時にホテリエとして真摯にコミュニケーションを取らなければなりません」
ロサンゼルス時代、氏のお母様は地元のホテルで働いていたといいます。お母様は接客やサービスに携わる中で、さまざまな日本の文化や考え方を取り入れていたそうです。そんな母の背中を見て育った氏にとって、日本からお越しになられるメンバー様は特別な存在なのかもしれません。
たくさんのメンバー様から「質の高いおもてなしだった」とご評価をいただくホクラニワイキキは、氏をはじめとするスタッフ達の心づくしのおもてなしと、深い思いやりの心に支えられています。
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